ADASにおけるセンサー構成の考え方
ADAS(Advanced Driver Assistance Systems:先進運転支援システム)は、車両周辺の環境を認識し、ドライバーの運転を支援するためのシステムです。
代表的な機能には、以下のようなものがあります。
ADASでは、カメラ、レーダー、超音波センサーなどの外界認識センサーが注目されますが、実際のシステムでは、車両の挙動や状態を把握する内部状態センサーも重要です。
シンメトリックセンサーでは、ADAS周辺システム向けに、加速度センサー、温度センサー、電流センサー、圧力センサーを組み合わせた構成をご提案します。
- アダプティブクルーズコントロール
- 車線維持支援
- 自動緊急ブレーキ
- 後側方監視
- 駐車支援
- ふらつき検知
- 車両姿勢制御
- 障害物検知
ADASで使われる主なセンサー
1. カメラ
カメラは、車線、標識、歩行者、車両、信号などを画像として認識するために使われます。
主な用途:
カメラは豊富な視覚情報を取得できますが、逆光、夜間、雨、霧、汚れなどの影響を受けやすいため、他のセンサーとの組み合わせが重要です。
- 車線認識
- 標識認識
- 歩行者検知
- 前方車両検知
- 周辺監視
- 駐車支援
2. ミリ波レーダー
ミリ波レーダーは、対象物までの距離や相対速度を測定するために使われます。前方監視、後側方監視、車間距離制御などで重要な役割を持ちます。
主な用途:
レーダーは天候や照度の影響を受けにくく、距離・速度検出に強みがあります。一方で、対象物の形状や分類ではカメラと組み合わせることで精度を高めます。
- アダプティブクルーズコントロール
- 自動緊急ブレーキ
- 後側方監視
- 車線変更支援
- 交差点支援
3. 超音波センサー
超音波センサーは、低速域・近距離の障害物検知に適しています。
主な用途:
近距離検知に強い一方、高速走行時や長距離検知には向きません。
- 駐車支援
- 後退時障害物検知
- 低速接近検知
- 近距離障害物警告
4. 加速度センサー・IMU
加速度センサーやIMUは、車両の姿勢、加減速、旋回、傾き、衝撃、振動を把握するために使用されます。
主な用途:
外界センサーが「周囲を見る」ためのセンサーであるのに対し、加速度センサーは「車両自身の動きを知る」ためのセンサーです。
- 車両姿勢制御
- 横滑り検知
- 車線維持支援の補正
- ADASカメラ・レーダーの姿勢補正
- 路面状態推定
- 衝撃イベント記録
5. 温度センサー
ADAS関連ユニットは、カメラ、レーダー、ECU、演算モジュールなど電子部品が多く、高温環境や自己発熱の影響を受けます。
温度センサーは、これらの機器の安定動作、熱保護、性能制御に使われます。
主な用途:
- ADAS ECU温度監視
- カメラモジュール温度監視
- レーダーモジュール温度監視
- 演算ユニット温度監視
- 熱保護制御
6. 電流センサー
ADAS ECU、カメラ、レーダー、LiDAR、演算ユニットなどの電源状態を監視するために、電流センサーが使われる場合があります。
主な用途:
消費電流の異常は、センサー故障、配線異常、ECU異常、過熱などの兆候になる場合があります。
- ADAS ECU電源監視
- センサー電源異常検知
- 消費電流監視
- 故障予兆検知
- 電源系統診断
7. 圧力センサー
ADASそのものの外界認識には直接使われないことが多いものの、ADASと連携するブレーキ、シャシー、サスペンション、冷却系では圧力センサーが重要です。
主な用途:
- ブレーキ圧監視
- 油圧制御
- 冷却回路監視
- サスペンション制御
- HVAC・熱管理システム監視
ADAS向けセンサー構成例
構成例1:前方ADAS基本構成
想定機能
- アダプティブクルーズコントロール
- 前方衝突警告
- 自動緊急ブレーキ
- 車線逸脱警告
- 車線維持支援
外界認識センサー
車両状態センサー
シンメトリックセンサー推奨構成
構成のポイント
前方ADASでは、カメラとレーダーによって前方車両、車線、障害物を認識します。加速度センサーは、車両の加減速や姿勢変化を把握し、制御の安定化に役立ちます。
ADAS ECUやカメラモジュールは発熱しやすいため、温度監視も重要です。また、電源異常や過電流を早期に検知するため、電流センサーを組み合わせることで診断性を高められます。
構成例2:車線維持・姿勢制御強化構成
想定機能
- 車線維持支援
- 車両姿勢制御
- 横滑り検知
- ふらつき検知
- 路面状態推定
外界認識センサー
車両状態センサー
シンメトリックセンサー推奨構成
構成のポイント
車線維持や姿勢制御では、外界認識だけでなく、車両が実際にどのように動いているかを把握することが重要です。
ACC-500はシャシー制御向けの3軸加速度センサーとして、路面状態や車体挙動の監視に適しています。ACC-520は6軸モデルとして、より高度な車両姿勢制御や横転検知に利用できます。
高精度な姿勢情報を取得することで、カメラやレーダーから得られる外界情報と車両挙動を組み合わせた制御が可能になります。
構成例3:高速道路ADAS構成
想定機能
- 高速道路走行支援
- アダプティブクルーズコントロール
- 車線変更支援
- 後側方監視
- 車間距離制御
外界認識センサー
- 前方ミリ波レーダー
- コーナーレーダー
- 前方カメラ
- 後側方レーダー
車両状態センサー
シンメトリックセンサー推奨構成
構成のポイント
高速道路ADASでは、前方だけでなく側方・後方の状況を把握する必要があります。コーナーレーダーや後側方レーダーと組み合わせることで、車線変更時の安全性を高めます。
加速度センサーは、加減速、横加速度、車体姿勢を把握するために使用します。温度センサーは、レーダーやADAS ECUの熱状態を監視し、高温時の性能低下や故障リスクを抑える役割を持ちます。
構成例4:駐車支援・低速ADAS構成
想定機能
- 駐車支援
- 後退時障害物検知
- 低速自動ブレーキ
- 周辺監視
- 近距離障害物警告
外界認識センサー
- 超音波センサー
- バックカメラ
- 周辺カメラ
- コーナーセンサー
車両状態センサー
シンメトリックセンサー推奨構成
構成のポイント
駐車支援では、近距離の障害物検知が重要です。超音波センサーやカメラに加えて、車両の低速挙動を把握する加速度センサーを組み合わせることで、車両の動きと周囲状況を関連付けて制御できます。
低速自動ブレーキや後退時支援では、ブレーキ系やHVAC・冷却系の状態監視も重要になるため、圧力センサーや電流センサーの併用が有効です。
構成例5:商用車・大型車ADAS構成
想定機能
- 前方衝突警告
- 車線逸脱警告
- 巻き込み検知
- 後側方監視
- 車両姿勢監視
- 積載状態変化の検知
外界認識センサー
- 前方カメラ
- 前方レーダー
- 側方レーダー
- 周辺カメラ
- 超音波センサー
車両状態センサー
- 高耐熱加速度センサー
- 電流センサー
- 圧力センサー
- 温度センサー
シンメトリックセンサー推奨構成
構成のポイント
商用車や大型車では、車両重量、積載状態、走行距離、稼働時間が乗用車と異なります。長時間稼働や高負荷条件を想定し、高温対応、IP67対応、CAN FD対応のセンサーを選定することが重要です。
ACC-520のような6軸センサーを組み合わせることで、車両姿勢、横転リスク、荷重変化に伴う挙動の変化を把握しやすくなります。
構成例6:EV向けADAS統合構成
想定機能
- 高速道路走行支援
- 車線維持支援
- 前方衝突回避
- EVバッテリー保護連携
- 熱管理連携
- 電源系統診断
外界認識センサー
車両状態センサー
- 加速度センサー
- 温度センサー
- 電流センサー
- 圧力センサー
シンメトリックセンサー推奨構成
構成のポイント
EVでは、ADASとバッテリー、熱管理、電源系統が密接に関係します。高負荷走行や急速充電後の走行では、電池温度、電流、冷却回路の状態を把握しながら、ADAS ECUや車両制御ECUと連携する必要があります。
CAN FD対応のセンサーを使用することで、測定値だけでなく診断情報も効率よく取得できます。EV向けADASでは、外界認識センサーと内部状態センサーを組み合わせることが重要です。
ADAS構成で確認すべき選定ポイント
1. 外界認識と車両状態監視を分けて考える
ADAS構成では、カメラやレーダーのように外を認識するセンサーと、加速度や温度のように車両自身の状態を監視するセンサーを分けて設計することが重要です。
外界認識センサーだけでは、車両の姿勢や内部状態までは十分に把握できません。
2. センサーフュージョンを前提にする
ADASでは、単一センサーの結果だけで判断するのではなく、複数のセンサー情報を組み合わせて信頼性を高めます。
たとえば、カメラで車線を認識し、レーダーで前方車両との距離を測定し、加速度センサーで車両の挙動を確認することで、より安定した支援制御が可能になります。
3. 温度・電源・通信の診断性を確保する
ADAS ECUやセンサーモジュールは、安全支援機能に関係するため、温度異常、電源異常、通信異常を早期に検知できる構成が重要です。
確認すべき項目:
- ECU温度監視
- センサー電源監視
- 通信異常検知
- 診断フラグ
- 異常時のフェイルセーフ
- ログ取得
4. CAN FD対応を検討する
ADASでは、センサー点数や診断情報が増えるため、CAN FD対応が有効になる場合があります。
特に、加速度センサー、電流センサー、温度センサーなどから測定値と診断情報を同時に取得する場合、CAN FDの採用により通信設計に余裕を持たせやすくなります。
5. 機能安全要求を初期段階で確認する
ADASに関連するセンサーは、安全機能に関係する場合があります。そのため、ISO 26262やASIL要求の有無を開発初期に確認しておくことが重要です。
後工程で安全要求が明確になると、センサー選定やシステム構成の見直しが必要になる場合があります。
ADAS向けセンサー選定チェックリスト
- 対象機能は何か
- 外界認識センサーは何を使うか
- 車両状態監視センサーは何が必要か
- 加速度センサーは何軸が必要か
- 高頻度サンプリングが必要か
- 温度監視点はどこか
- 電源系統の電流監視は必要か
- ブレーキ・冷却・油圧系の圧力監視は必要か
- CAN FD対応が必要か
- IP67対応が必要か
- 150℃対応が必要か
- AEC-Q100対応が必要か
- ASIL要求はあるか
- 診断情報は取得できるか
- 長期供給性は確認済みか
よくある構成ミス
外界認識センサーだけで構成してしまう
カメラやレーダーだけでは、車両自身の姿勢や内部状態を十分に把握できない場合があります。加速度、温度、電流、圧力などの内部状態センサーを組み合わせることで、システム全体の信頼性を高められます。
温度監視を後回しにする
ADAS ECUやカメラモジュールは発熱しやすく、高温時に性能低下や保護制御が必要になる場合があります。温度監視は初期設計段階から検討することが重要です。
通信帯域を見積もらない
センサー点数が増えると、通信データ量も増加します。CAN FDやEthernetの採用要否は、センサー数、送信周期、診断情報の量を踏まえて検討してください。
安全要求を後から確認する
ADAS機能に関係する部品では、安全要求の確認が遅れると設計変更が大きくなる可能性があります。ISO 26262やASIL要求は初期段階で確認しておくことをおすすめします。
シンメトリックセンサーのADAS向け製品例
加速度センサー
温度センサー
電流センサー
圧力センサー
まとめ
ADAS向けセンサー構成では、カメラ、レーダー、超音波センサーなどの外界認識センサーに加えて、車両の姿勢、温度、電流、圧力を監視する内部状態センサーを組み合わせることが重要です。
特にEVや商用車では、ADAS機能とバッテリー、熱管理、電源系統、車両姿勢制御が密接に関係します。センサー構成を検討する際は、外界認識、車両状態監視、通信、診断、安全要求をまとめて確認する必要があります。
シンメトリックセンサーでは、ADAS向けに加速度センサー、温度センサー、電流センサー、圧力センサーをラインアップしています。前方ADAS、高速道路支援、駐車支援、商用EV、車両姿勢制御など、用途に応じた構成をご提案します。