150℃対応センサーとは
自動車の電動化、高出力化、電子制御化が進むにつれて、センサーが搭載される環境はますます厳しくなっています。エンジンルーム、EVバッテリーパック周辺、インバーター、モーター、排気系近傍、冷却回路周辺などでは、センサー本体が高温環境にさらされることがあります。
150℃対応センサーとは、こうした高温環境下でも安定した測定・通信・診断を行うことを想定した車載向けセンサーです。
ただし、カタログ上で「150℃対応」と記載されていても、実際の搭載設計では、周囲温度、筐体温度、取付部の熱伝導、配線、コネクタ、振動、湿度、経年劣化などを総合的に考慮する必要があります。
本ガイドでは、150℃対応センサーを車両に搭載する際の確認ポイントを解説します。
150℃対応が求められる主な用途
1. エンジンルーム内の温度・圧力・振動監視
エンジン周辺は、走行負荷、外気温、冷却状態、排気系の影響により高温になりやすい領域です。
使用例:
推奨製品例:
2. EVバッテリー周辺
EVバッテリーは通常、温度管理された環境で使用されますが、急速充電、高負荷走行、冷却系異常、外気温の影響により高温状態になることがあります。
特に商用EVや大型EVでは、長時間稼働や大容量バッテリーにより熱負荷が高くなりやすいため、150℃対応センサーが必要になる場合があります。
使用例:
推奨製品例:
3. インバーター・モーター周辺
EVやHEVのインバーター、モーター周辺は、高電圧・高電流・高発熱が発生しやすい領域です。センサーには、高温対応だけでなく、電磁ノイズ耐性や絶縁性も求められます。
使用例:
推奨製品例:
4. 商用車・建機・特殊車両
商用車、建機、農機、特殊車両では、長時間稼働、高負荷運転、粉塵、水、泥、振動などの厳しい環境にさらされます。
高温対応に加えて、防水・防塵、耐振動、長期供給性、保守性も重要です。
使用例:
推奨製品例:
150℃対応センサー選定の基本ポイント
1. 測定範囲と動作温度を分けて確認する
センサー選定でよくある誤解が、「測定範囲」と「動作温度範囲」を混同することです。
たとえば、温度センサーで「測定範囲:-40〜200℃」と記載されていても、センサー本体や電子回路の動作温度が150℃まで保証されているとは限りません。
確認すべき項目:
150℃環境で使用する場合は、センサー単体ではなく、周辺部品を含めたシステムとして確認することが重要です。
- 測定対象の温度範囲
- センサー本体の動作温度範囲
- コネクタ部の耐熱温度
- ケーブル・ハーネスの耐熱温度
- 取付部材の耐熱温度
- 長時間使用時の性能変化
2. 連続150℃か、一時的150℃かを確認する
同じ150℃対応でも、連続使用を想定したものと、一時的なピーク温度を想定したものでは設計条件が異なります。
確認すべき条件:
特にエンジンルームやバッテリーパック内では、走行中よりも停止直後に熱がこもる場合があります。実車環境での温度プロファイルを把握した上で選定してください。
- 150℃での連続使用時間
- ピーク温度の発生頻度
- 温度サイクル回数
- 通電状態での高温動作
- エンジン停止後の熱だまり
- 急速充電後の温度上昇
3. 精度の温度依存性を確認する
高温環境では、センサーの測定精度が常温時と同じとは限りません。
温度変化によって、オフセット、感度、ドリフト、応答速度が変化する場合があります。
確認すべき項目:
制御入力として使用するセンサーでは、常温時のスペックだけでなく、高温時の実効精度を確認する必要があります。
- 25℃時の精度
- 125℃時の精度
- 150℃時の精度
- 温度ドリフト
- 経年変化
- 補正機能の有無
4. コネクタとハーネスの耐熱性を確認する
高温環境では、センサー本体だけでなく、コネクタやハーネスが劣化することがあります。
確認すべき項目:
150℃対応センサーを採用しても、接続部が高温環境に適していなければ、通信異常や断線、接触不良の原因になります。
- コネクタ樹脂の耐熱温度
- 端子の接触信頼性
- シール材の耐熱性
- ケーブル被覆材の耐熱性
- 曲げ・振動による劣化
- 油分・冷却液・薬品への耐性
5. 取付位置の熱伝導を考慮する
センサーが受ける温度は、周囲空気温度だけで決まりません。金属ブラケットや取付面を通じた熱伝導、近接部品からの輻射熱、密閉空間での熱だまりも影響します。
確認すべき項目:
センサー本体が150℃対応でも、局所的な熱集中によって想定以上の温度に達する可能性があります。
- 取付面の温度
- 周囲空気温度
- 近接する熱源
- 金属部品からの熱伝導
- 熱遮蔽板の有無
- 空気流れ
- センサー筐体の放熱性
6. 防水・防塵性能との両立を見る
高温環境では、シール材や接着部、樹脂部品の劣化が進みやすくなります。そのため、IP67などの防水・防塵性能が必要な場合は、高温条件下でのシール信頼性も確認してください。
確認すべき項目:
特に車両下部、バッテリーパック周辺、商用車用途では、高温・水・振動が同時に発生する条件を想定することが重要です。
- IP等級
- 高温後の防水性能
- 温度サイクル後のシール性
- 結露への耐性
- 冷却水・油・塩水への耐性
- 洗浄工程への対応
搭載設計時のポイント
1. 熱源からの距離を確保する
可能であれば、センサーは排気系、モーター、インバーター、高温配管などの熱源から離して配置します。
やむを得ず近接配置する場合は、以下を検討します。
高温対応センサーであっても、不要な熱負荷を避けることで長期信頼性を高めることができます。
- 熱遮蔽板の追加
- 断熱材の使用
- 金属ブラケットの形状変更
- 空気流路の確保
- ハーネス引き回しの変更
2. ハーネスの引き回しを最適化する
高温部に近いハーネスは、被覆劣化、硬化、割れ、接触不良の原因になります。
設計時には以下を確認してください。
センサー単体の耐熱性だけでなく、ハーネス設計まで含めて評価することが重要です。
- 高温部を避けたルートか
- 可動部と干渉しないか
- 振動で摩耗しないか
- 曲げ半径が適切か
- 固定点が十分か
- コネクタ部に応力が集中しないか
3. 振動と熱の複合ストレスを考える
高温環境では樹脂やシール材が柔らかくなったり、経年劣化しやすくなったりします。その状態で振動が加わると、取付部やコネクタ部に負荷が集中する可能性があります。
確認すべき項目:
特に加速度センサーや圧力センサーでは、取付状態が測定値に影響する場合があります。
- 取付ボルトの緩み
- ブラケット剛性
- コネクタ部の振動
- ハーネスの揺れ
- 熱サイクルによる応力
- 長期使用後の固定状態
4. 熱サイクルを想定する
車載環境では、常に150℃で一定というより、低温と高温を繰り返す熱サイクルが発生します。
熱サイクルでは、異なる材料の熱膨張差により、コネクタ、シール、はんだ、接着部、筐体に負荷がかかります。
確認すべき項目:
150℃対応センサーを選ぶ際は、最高温度だけでなく、温度変化の繰り返しに耐えられるかを確認してください。
- -40℃〜150℃の温度サイクル
- 急激な温度変化
- 冷却水や外気による急冷
- 長期使用後の防水性
- 測定精度の変化
- 通信異常の有無
5. EMC・ノイズ環境を確認する
高温部の近くには、インバーター、モーター、高電圧配線、電源ラインなどが存在する場合があります。
CAN FDやEthernetなどの通信を使用する場合は、温度だけでなく、ノイズ環境も評価する必要があります。
確認すべき項目:
- 高電圧配線との距離
- インバーター周辺ノイズ
- グランド設計
- シールド処理
- コネクタのシールド性能
- 通信エラー率
- 異常時のフェイルセーフ動作
センサー種類別の搭載ポイント
温度センサー
温度センサーは、測定対象との熱結合が重要です。取付位置や接触状態によって、実際の測定値が大きく変わることがあります。
搭載ポイント:
推奨製品例:
加速度センサー
加速度センサーは、取付剛性と設置方向が重要です。高温環境では取付部材や樹脂筐体の変形、ブラケット剛性の変化にも注意が必要です。
搭載ポイント:
推奨製品例:
圧力センサー
圧力センサーは、配管や冷却回路、油圧回路に直接取り付けられることが多く、流体温度や取付部からの熱影響を受けます。
搭載ポイント:
推奨製品例:
電流センサー
電流センサーは、高電流による発熱や周辺温度の影響を受けやすいセンサーです。特にEVや急速充電システムでは、絶縁性、放熱、ノイズ対策が重要です。
搭載ポイント:
推奨製品例:
150℃対応製品の選定チェックリスト
150℃対応センサーを選定する際は、以下を確認してください。
- 測定対象の最高温度は何℃か
- センサー本体の動作温度は150℃に対応しているか
- 連続150℃か、一時的ピーク150℃か
- 高温時の測定精度は十分か
- 温度ドリフトは許容範囲内か
- コネクタは150℃環境に対応しているか
- ハーネス被覆材は高温環境に対応しているか
- 取付部材の耐熱性は十分か
- IP67などの防水性能は高温後も維持されるか
- 振動と熱の複合条件で評価しているか
- CAN FDやEthernet通信にノイズ影響はないか
- AEC-Q100対応が必要か
- ISO 26262 / ASIL要求があるか
- 長期供給性は確認済みか
よくある搭載ミス
カタログの最高温度だけで判断してしまう
150℃対応という記載だけで採用すると、コネクタ、ハーネス、取付部材が条件を満たさない場合があります。周辺部品を含めた確認が必要です。
熱源からの輻射熱を見落とす
周囲空気温度が150℃未満でも、排気系や金属部品からの輻射熱により、センサー表面が想定以上に高温になる場合があります。
高温時の精度変化を確認しない
常温時の精度だけを見て選定すると、高温環境で測定誤差が大きくなる場合があります。温度ドリフトや補正機能を確認してください。
ハーネスの耐熱性を軽視する
センサー本体が高温対応でも、ハーネス被覆が劣化すると断線や通信異常につながります。高温部を避けた配線設計が重要です。
温度サイクル評価を行わない
実車環境では、低温始動、高温走行、停止後の熱だまり、急冷などが繰り返されます。最高温度だけでなく、温度サイクルへの耐性を確認してください。
シンメトリックセンサーの150℃対応製品例
加速度センサー
温度センサー
圧力センサー
電流センサー
用途別おすすめ構成
EVバッテリーパック向け
高温環境、長時間稼働、冷却回路監視までを想定した構成です。商用EVや大型EVのバッテリーパック監視に適しています。
エンジンルーム向け
エンジン周辺の高温、振動、圧力変動に対応する構成です。従来車、HEV、商用車のエンジンルーム監視に適しています。
インバーター・モーター周辺向け
高電圧・高電流・高発熱環境を想定した構成です。EV駆動系の監視や高出力車両向けに適しています。
まとめ
150℃対応センサーを選定する際は、最高温度だけでなく、連続使用条件、高温時の精度、コネクタ・ハーネスの耐熱性、取付位置の熱伝導、防水性能、振動との複合ストレスを総合的に確認することが重要です。
特にEV、商用車、エンジンルーム、インバーター周辺では、高温・振動・水・ノイズが同時に発生することがあります。センサー単体のスペックだけでなく、実際の搭載環境を想定した評価が必要です。
シンメトリックセンサーでは、温度、加速度、圧力、電流の各カテゴリで150℃対応製品をラインアップしています。用途や搭載環境に応じて、EVバッテリー、エンジンルーム、商用EV、インバーター周辺向けの構成をご提案します。